VYMとJEPIはどちらが有利?10年後・20年後の差を実績で比較
以前、JEPQと1489(NASDAQ100カバードコール)を5年間のデータで比較する「思考実験」記事を書きました。今回はその第2弾として、高配当ETFの代表格であるVYMと、超高配当・毎月分配で人気のJEPIを同じ考え方で並べてみます。
結論から言うと、分配金だけならJEPIが圧倒的に有利でしたが、評価額まで含めた総資産ではVYMが上回りました。つまり、JEPIは「毎月の現金収入を作る商品」、VYMは「資産を育てながら分配金も得る商品」として使い分けるのが現実的です。
毎月の分配金を重視する人に向けて、VYMとJEPIを2020年末から2025年末までの実績データ(2025年末時点)で比較し、同じ1万ドルを投資したらどうなったかを整理します。さらに、過去の実績を機械的に延長した場合の10年後・20年後の参考値と、FIRE後の使い分けについても考えます。
なお、私自身はVYMとJEPIの両方を保有しています。昔に購入したVYMは株価成長と分配金の両方を取れている一方、現在はFIRE後の毎月キャッシュフローを意識して、JEPIの比率を高めています。この記事では、単なる商品比較ではなく、実際に保有している立場から「どちらをどの役割で使うか」を整理します。
この記事は、VYMとJEPIのどちらが絶対に正解かを決めるものではありません。資産成長を重視するのか、毎月のキャッシュフローを重視するのかによって、見え方は大きく変わります。その判断材料として読んでもらえればと思います。
■VYMとJEPIの基本的な違い
まずは両者の性格を整理します。
| 項目 | VYM | JEPI |
|---|---|---|
| 正式名称 | Vanguard High Dividend Yield ETF | JPMorgan Equity Premium Income ETF |
| 主な投資対象 | 米国高配当株 | 米国大型株+ELNを通じたオプション戦略 |
| 運用方式 | 指数連動型 | アクティブ型 |
| 経費率(信託報酬) | 0.06% | 0.35% |
| 構成銘柄数 | 約560銘柄 | 約100〜130銘柄+ELN |
| 分配頻度 | 四半期 | 毎月 |
| 分配利回り | 高め | 超高め |
| 株価成長 | 期待しやすい | 抑制されやすい |
| 分配金の性質 | 企業配当が中心 | 配当+オプションプレミアム |
| 向いている人 | 資産成長と分配金を両方狙いたい人 | 毎月のキャッシュフローを重視する人 |
経費率や構成銘柄数は2025年末時点の公表情報・概算であり、将来変更される可能性があります。
ざっくり言えば、VYMは「資産を育てながら分配金も受け取るETF」、JEPIは「保有資産から高い現金収入を得るETF」です。同じ高配当系でも、株価成長への期待値はかなり違います。
VYMは高配当株に広く分散し、株価成長と分配金の両方を狙う商品です。一方のJEPIは、米国大型株のポートフォリオに加えて、ELNを通じたオプション戦略を使い、毎月の分配金を厚くする設計です。その代わり、強い上昇相場では市場全体に劣後しやすい面があります。
■過去5年の株価と分配金を比較
ここでは、2020年末から2025年末までの株価推移と、2021年から2025年までの年間分配金を確認します。株価は年末終値ベース、分配金は1口あたり年間分配金です。数値は2025年末時点の実績データに基づきます。
| 年 | VYM | 前年比 | JEPI | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 2020 | 91.51 | ー | 55.75 | ー |
| 2021 | 112.11 | +22.51% | 63.19 | +13.35% |
| 2022 | 108.21 | -3.48% | 54.49 | -13.77% |
| 2023 | 111.63 | +3.16% | 54.98 | +0.90% |
| 2024 | 127.59 | +14.30% | 57.53 | +4.64% |
| 2025 | 143.52 | +12.49% | 57.24 | -0.50% |
この表で重要なのは、VYMは株価を大きく伸ばした一方、JEPIの株価はほぼ横ばいだったという点です。
株価のCAGRは、2020年末から2025年末までで、VYMが約9.42%、JEPIが約0.53%です。VYMは5年間で株価をしっかり伸ばした一方、JEPIの株価はほぼ横ばいでした。
これはJEPIの設計を考えると、ある程度は自然な結果です。JEPIは毎月分配を重視し、配当とオプションプレミアムを投資家に分配するため、株価やNAVに成長分が残りにくい構造です。また、JEPIはS&P500より低ボラティリティの株式ポートフォリオを目指す運用であり、この5年間のようにグロース株・大型ハイテク株が相場を牽引した局面では、素直な株式指数より出遅れやすい面もあります。
なお、JEPIの上昇余地を抑える要因はオプション戦略だけではありません。ELNは純資産の最大20%までとされており、JEPI全体の株価が横ばいだった理由を「オプションで上昇益が全部消えるから」と単純化するのは不正確です(JEPIとJEPQの違いについてはこちらの記事で詳しく解説しています)。高い分配を出す設計、低ボラティリティを目指す株式選別、オプション戦略の組み合わせとして見るべきだと思います。
●年間分配金の推移
| 年 | VYM | 前年比 | JEPI | 前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 2021 | 3.0961 | ー | 4.1613 | ー |
| 2022 | 3.2518 | +5.03% | 6.3621 | +52.89% |
| 2023 | 3.4780 | +6.96% | 4.6183 | -27.41% |
| 2024 | 3.4945 | +0.47% | 4.2164 | -8.70% |
| 2025 | 3.5008 | +0.18% | 4.7198 | +11.94% |
分配金では、JEPIの金額水準がVYMを大きく上回ります。ただし、安定して増えているのはVYMであり、JEPIは年によって大きく上下しています。
VYMの分配金は、この5年間では減配せずに増加しています。ただし、2024年と2025年の増加率はかなり小さく、近年は伸びが鈍化しています。2021年から2025年までの分配金CAGRは約3.12%です。
一方のJEPIは、2022年に大きく増えたあと、2023年と2024年は減少し、2025年に持ち直しています。2022年から2025年までの分配金CAGRは約マイナス9.47%です。金額の絶対水準は高いものの、安定的な増配ETFとは性格が違います。
JEPIの分配金は、企業配当だけでなくオプションプレミアムの影響を受けます。そのため、株式市場のボラティリティや運用環境によって分配金が大きく変動します。高い分配利回りは魅力ですが、毎年安定して増える前提で見るべき商品ではありません。
■1万ドル投資した場合の実績比較
ここからは、2020年末にVYMとJEPIへそれぞれ1万ドルを投資したと仮定します。分配金は再投資せず、そのまま現金で受け取る前提です。税金、為替、売買手数料は考慮していません。
2020年末の株価で計算すると、購入口数は次の通りです。
| ETF | 2020年末株価 | 1万ドルで買える口数 |
|---|---|---|
| VYM | 91.51 | 約109.28口 |
| JEPI | 55.75 | 約179.37口 |
JEPIのほうが株価が安いため、同じ1万ドルでも購入口数は多くなります。この口数差も、受け取る分配金の差に影響します。
●年間分配金・累積分配金
| 年 | VYM年間 | VYM累計 | JEPI年間 | JEPI累計 |
|---|---|---|---|---|
| 2021 | 338.33 | 338.33 | 746.42 | 746.42 |
| 2022 | 355.35 | 693.68 | 1,141.18 | 1,887.61 |
| 2023 | 380.07 | 1,073.75 | 828.39 | 2,716.00 |
| 2024 | 381.87 | 1,455.62 | 756.30 | 3,472.30 |
| 2025 | 382.56 | 1,838.18 | 846.60 | 4,318.91 |
5年間の累積分配金は、VYMが約1,838ドル、JEPIが約4,319ドルです。分配金だけを見ると、JEPIはVYMの約2.35倍を受け取れた計算になります。
毎月のキャッシュフローという点では、JEPIの強さがはっきり出ます。資産形成期よりも、FIRE後やリタイア後の生活費補填を重視する人にとって、この差は心理的にも大きいと思います。
●評価額まで含めた比較
| 項目 | VYM | JEPI |
|---|---|---|
| 2025年末評価額 | 約15,684 | 約10,267 |
| 累積分配金 | 約1,838 | 約4,319 |
| 合計 | 約17,522 | 約14,586 |
2025年末時点の評価額は、VYMが約15,684ドル、JEPIが約10,267ドルです。VYMは元本を大きく伸ばしましたが、JEPIはほぼ元本近辺にとどまりました。
分配金と評価額を足した合計では、VYMが約17,522ドル、JEPIが約14,586ドルです。分配金ではJEPIが優位ですが、評価額まで含めた総資産ではVYMが優位になりました。
つまり、VYMとJEPIの違いはかなり明確です。手元に入ってくる現金を重視するならJEPI、資産全体の成長を重視するならVYMです。どちらが正しいというより、何を目的に持つかで評価が変わります。
■10年後・20年後のシミュレーション
ここからは思考実験です。過去の実績CAGRをそのまま将来に延長したら、VYMとJEPIの差はどうなるのかを見てみます。
前提は次の通りです。
| 項目 | VYM | JEPI |
|---|---|---|
| 株価CAGR | +9.42% | +0.53% |
| 分配金前提 | 2021〜2025年の分配金CAGR +3.12% | 2023〜2025年平均の約4.52ドルを維持 |
このシミュレーションでは、税金・為替・売買手数料は考慮せず、ETF本体の値動きと分配金だけで比較しています。
これは将来予測ではありません。過去の実績を機械的に延長しただけの参考値です。実際の株価、分配金、為替、税金は大きく変動します。
●評価額の推移
| 時点 | VYM | JEPI |
|---|---|---|
| 2025年末 | 約15,684 | 約10,267 |
| 10年後 | 約38,577 | 約10,823 |
| 20年後 | 約94,890 | 約11,410 |
評価額では、時間が経つほどVYMとの差が広がります。理由は単純で、株価成長率の差が複利で効いてくるからです。
JEPIは高い分配金を出す一方、株価成長はかなり抑えられています。仮にこの傾向が続くなら、評価額は大きくは増えません。
●累積分配金の推移
| 時点 | VYM | JEPI |
|---|---|---|
| 2025年末 | 約1,838 | 約4,319 |
| 10年後 | 約6,385 | 約12,423 |
| 20年後 | 約12,567 | 約20,528 |
累積分配金では、JEPIが引き続き大きく上回ります。毎年の分配金水準が高いため、長期で見ても受取現金の累計はJEPIが優位です。
ただし、VYMも分配金が成長する前提なら、時間とともに差は少しずつ縮まります。元本が育ち、1口あたり分配金も増えれば、長期ではVYMの年間分配金も追い上げていきます。
●評価額+累積分配金
| 時点 | VYM | JEPI |
|---|---|---|
| 2025年末 | 約17,522 | 約14,586 |
| 10年後 | 約44,963 | 約23,247 |
| 20年後 | 約107,457 | 約31,937 |
評価額と累積分配金を足した合計では、VYMが大きく上回ります。これは、VYMの株価成長が長期で効いてくるためです。
一方で、JEPIは「資産を増やすETF」というより、「資産から現金収入を引き出すETF」として見るほうが自然です。毎月の分配金を生活費や精神的な安心材料として使うなら、JEPIにはVYMとは別の価値があります。
■JEPIに感じる個人的な疑問
ここで、JEPIに対して私が感じている疑問と、実際に保有して感じている点についても書いておきます。
ひとつは、株式部分をアクティブに選別するくらいなら、素直にS&P500インデックスを土台にしたほうが良かったのではないか、という点です。JEPIはS&P500より低ボラティリティを目指す株式ポートフォリオを組み、そこにELNを通じたオプション戦略を組み合わせています。この設計自体は理解できますが、株高局面では素直なインデックスに比べて出遅れやすい面があります。
もうひとつは、上昇相場での取りこぼしです。JEPIはオプションプレミアムを得る代わりに、市場上昇の一部を放棄する可能性があります。また、株式部分をアクティブに選別して運用する性質上、ファンドマネージャーの意思や手腕が運用成績を左右します。
JEPIは2020年設定の商品であるため、発売されて以降、長期にわたる本格的な下落相場を何度も経験しているわけではありません。そのため、下落局面でファンドマネージャーの意思決定がどのように機能するかはまだ未検証であり、現時点で断定的な評価はできません。
少なくとも、株価成長という観点だけで見ると、これまでの上げ相場では素直なインデックスに劣後してきました。ただし、JEPIはS&P500に勝つこと自体を目的にした商品ではなく、低ボラティリティと毎月分配を重視する商品です。この点は分けて考える必要があります。
それでも、FIRE後の使い方として考えると、JEPIの毎月分配には確かな魅力があります。資産を取り崩すだけの生活は、頭では合理的だと分かっていても、心理的にはかなり負担があります。毎月まとまった現金が入るという事実は、人によっては大きな安心材料になります。
■FIRE後にどう使い分けるか
資産形成期、つまりまだ働いていて入金力がある時期は、VYMやS&P500などの成長資産を中心にしたほうが合理的だと思います。複利を働かせる時間があるなら、元本を育てることの価値は大きいからです。
問題はFIRE後です。FIRE後は、資産を増やすことだけでなく、生活費をどう安定させるかが重要になります。毎月の収入がなくなると、資産残高が十分にあっても、取り崩しに強い抵抗を感じる人は少なくないと思います。
その点で、JEPIのような毎月分配ETFは精神的なクッションになります。分配金で生活費の一部をまかなえれば、株価が下がっている時期に売却する心理的負担も軽くなります。
ただし、JEPIに資産を大きく寄せすぎると、今度は元本成長が弱くなります。インフレに対して資産全体が伸びにくくなる可能性もあります。したがって、JEPIを使うなら、あくまでキャッシュフロー補完の役割として考えるのが現実的だと思います。
■たごさくの結論|比率を自分でコントロールする
私の結論は、VYMかJEPIかの二択ではありません。
私自身、昔に購入したVYMを現在も保有しており、株価の成長を含めてしっかり分配金を受け取っています。しかし、現在はFIRE後のキャッシュフロー確保を真剣に見据えており、コールオプションを活用した商品に強い関心を持っています。そのため、実際の保有数量としては、現在VYMよりもJEPIのほうを多く所有しています。
かつては、QYLDやXYLDなどのカバードコール商品も検討しました。ただ、これらは指数の下落を大きく受ける一方で、上げ相場の恩恵は取りこぼしやすい構造です。私にはその点が引っかかり、購入には踏み切れませんでした。
その点、純資産の8割前後で米国大型株のポートフォリオを保有し、残りの一部でELNを通じたオプション戦略を使うJEPIは、私にとって比較的受け入れやすい設計でした。これが、私が初めてカバードコール系の商品を購入する決断をした大きな理由です。
成長を狙う資産は、素直にインデックスやVYMのような成長余地のあるETFで持つ。そのうえで、毎月のキャッシュフローが欲しい部分だけをJEPIのような毎月分配型の商品で補う。この役割分担が、FIRE後には扱いやすいと思います。
たとえば、資産の大半は成長資産で持ちつつ、生活費の一部を補う範囲だけJEPIに振り向ける。分配金が多すぎると感じたら比率を下げる。取り崩しが精神的にきついと感じたら比率を少し上げる。
商品そのものに絶対的な優劣をつけるより、自分のポートフォリオの中で役割と比率を自分でコントロールするほうが重要です。資産形成期は成長重視、FIRE後は心理面も含めてキャッシュフローを補う。この切り分けが、自分にはいちばん納得しやすいです。
■注意点
本記事の数値は、過去の実績をもとにした単純計算です。将来の運用成果を予測するものではありません。
税金、為替、売買手数料、分配金再投資は考慮していません。日本の証券口座で米国ETFを保有する場合、米国源泉税や国内課税、NISA口座での扱いなどにより、実際の手取りは変わります。
JEPIの分配金は、配当だけでなくオプションプレミアムの影響を受けます。将来も同じ水準の分配金が続く保証はありません。
10年後・20年後の推計は、過去の株価CAGRや分配金実績を機械的に延長した参考値です。実際のリターンは大きく上下します。
免責事項:この記事は情報提供を目的としており、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。記載の数値・データは2025年末時点のものであり、最新情報は各運用会社の公式サイトをご確認ください。

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